安心問答−浄土真宗の信心について−

浄土真宗の信心についての問答

「阿弥陀様の先手のお救いとよくお聞きしますが、これはこちらから「阿弥陀様、助けてください、助けてください」と発信することではなく、阿弥陀様からの「助けるぞ、助けるぞ」のお声(具体的には南無阿弥陀仏)を聞かせて頂くということでしょうか?」(Peing-質問箱−)

Peing-質問箱-

阿弥陀様の先手のお救いとよくお聞きしますが、これはこちらから「阿弥陀様、助けてください、助けてください」と発信す | Peing -質問箱-

質問箱には以下のように回答しました。

はい。私から阿弥陀仏に発信する事では無く。阿弥陀仏からの仰せを聞くと言う事です。

これに加えて書きます。
「先手のお救い」とは、先人が言われたもので今でもよく使われます。先手、後手と言うのは囲碁や将棋で使われる言葉が出所だと思われます。

現在将棋の世界では藤井聡太八冠の活躍で大きな注目を集めています。将棋の世界では先手有利と言われますが、藤井聡太八冠に関してはそれが顕著です。2023年の成績は、年間勝率85.7%ですが、先手番に関しては23勝1敗・勝率95.8%という驚異的な数字です。ちなみに後手番は19勝6敗・勝率76%です。
藤井聡太 2023年度の成績 将棋評価値速報

なぜ先手が有利になるかといえば、先手が打った手に対して後手の人はそれに対応する形で将棋が進んでいくからです。どのような形にしていくのかは先手が決めていくことになるからです。

阿弥陀仏の救いを先手の救いと言われるのは、阿弥陀仏が私をどう救うのかということは阿弥陀仏が考えられて、阿弥陀仏が先に手を打って来られているからです。決して私が先手で「助けてください」とお願いしたことに対応して本願を建てられたのではありません。

すでに先手を打たれている私は、後手の番なので、先手に対して対応する形しかとることはできません。会話で言えば、相手が先に話しかけてきたようなものです。その相手が先に話しかけた内容を一切無視して話をすると会話が成立しません。
私が阿弥陀仏に対して「助けてください」と先手で声を上げるとすれば、それは阿弥陀仏が私と私の苦しみをご存知ない場合です。

そうではなく阿弥陀仏は私をすでによく知っておられるから本願を建てられたのだと歎異抄に書かれいます。

しかるに仏かねてしろしめして、煩悩具足の凡夫と仰せられたることなれば、他力の悲願はかくのごとし、われらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。(歎異抄 - WikiArc第9条・浄土真宗聖典註釈版P836)

我らがために建てられた他力の悲願は、私に先手で「ただ今助ける」と南無阿弥陀仏となって呼びかけられています。後手の私は、阿弥陀仏の先手に応じるしかありません。それが南無阿弥陀仏を「われらがためなり」と聞いて疑いないことです。