安心問答−浄土真宗の信心について−

浄土真宗の信心についての問答

「回向」を現代の言葉で説明すると?(村井さんのコメント)

村井さんよりコメントを頂きました。有り難うございました。

「回向」を現代の言葉で説明していただけますか(村井さんのコメント)

http://d.hatena.ne.jp/yamamoya/20110702/1309554887#c1309608759

「回向を首としたまいて 大悲心をば成就せり」の「回向」は、与えるという意味です。

「回向」は、本願の名号をもつて十方の衆生にあたへたまふ御のりなり。(一念多念証文・浄土真宗聖典(註釈版)P678

上記の御文は、本願成就文の「至心回向」の「回向」について解説された箇所です。
この回向は、他力回向のことで、回施趣向という意味です。回施とは、阿弥陀仏が成就された南無阿弥陀仏の大功徳を与えて下さることです。趣向とは、共に仏道に向かわせることです。
阿弥陀仏の方から、南無阿弥陀仏の大功徳を与えて下さり、共に浄土に往生し仏に成るといわれているのが、この他力回向です。

自力回向はそれに対して回転趣向の意味で、自らの功徳を転じて阿弥陀仏に差し向けて、浄土往生しようとすることです。
親鸞聖人は、自力回向をすてて他力回向によって救われなさいと教えられました。

(21)
度衆生心といふことは 弥陀智願の回向なり
 回向の信楽*1うるひとは 大般涅槃をさとるなり*2
(22)
如来の回向*3に帰入して 願作仏心*4 をうるひとは
 自力の回向*5をすてはてて 利益有情はきはもなし(正像末和讃・浄土真宗聖典(註釈版)P604)

阿弥陀如来から私へは、他力回向ですから一方通行です。こちらから阿弥陀仏に何かを差し向けて、阿弥陀仏から何かを頂くというものではありません。
まず「○○をして」とか「○○となってから」と、阿弥陀仏の救いに何か条件をつけるのは、その条件を阿弥陀仏に差し向けている心です。「後生に驚きが立ちましたから救って下さい」「罪悪を感じましたから助けて下さい」というのも、何かの善根を差し向けているように思えない言葉ですが、これも自力回向です。
それは捨てて、ただちに阿弥陀仏が差し向けて下さる南無阿弥陀仏を聞いて浄土往生する身になりなさいと、親鸞聖人は教えられています。

*1:「弥陀の願力をふたごころなく信ずるをいふなり」(異本左訓)。

*2:「弥陀如来とひとしくさとりを得るをまうすなり」(異本左訓)。

*3:「弥陀の本願をわれらに与へたまひたるを回向とまうすなり」(異本左訓)。

*4:「浄土の大菩提心なり」(異本左訓)。

*5:自力によって修めた功徳を往生の果を得るためにふり向けたり、また他の人に与えようとすること。