安心問答−浄土真宗の信心について−

浄土真宗の信心についての問答

「信前の称名念仏の意義と、その必要性についてお教え願います。」(Peing質問箱に頂いた質問)

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Peing-質問箱-より

信前の称名念仏の意義と、その必要性についてお教え願います。 | Peing -質問箱-
質問箱には、以下のように書きました。

称名念仏は、私の無明の闇が破られて往生成仏の身に救う働きがあるので勧められます。必要性という点については、それ以外に阿弥陀仏が私を救う手だてがありません。


これに加えて書きます。

称名念仏とは、阿弥陀仏の名号(南無阿弥陀仏)を口で称えていることをいいます。
その行為そのものには、信前も信後も変わりません。
ただその「行為」そのものに何かの力があるのではなく、称えられた南無阿弥陀仏そのものに私を救う働きがあるのだと教えられています。

大行とはすなはち無碍光如来の名を称するなり。この行はすなはちこれもろもろの善法を摂し、もろもろの徳本を具せり。極速円満す、真如一実の功徳宝海なり。ゆゑに大行と名づく。(顕浄土真実行文類 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P141)

私たちの日常で言えば「発言」するとき「言葉を発する行為」そのものよりも「発言内容」が重視されるのと同じように思って頂ければいいと思います。


「信前の称名念仏」と質問に書かれているので、「称名念仏」と聞くと「私の口の行為そのもの」に着目をして、称えられている中身である「南無阿弥陀仏」そのものにあまり目が向いておられないのではないかと思います。
確かに「称える」という行為そのものはそれほど難しいものでもありませんし、「南無阿弥陀仏」は漢字で書けば六字ですからそれほど功徳があるようには思えません。しかし、その南無阿弥陀仏には私の無明の闇を破って往生成仏させる働きがあります。これを称名破満といいます。

「称名破満」を浄土真宗辞典から

浄土真宗辞典にはこのように書かれています。

しょうみょうはまん 称名破満
称名によって衆生の無明の闇が破られ(破闇)、往生成仏の志願が満たされる(満願)ことをいう。
曇鸞は『論註』讃嘆門釈に「かの無碍光如来の名号は、よく衆生の一切の無明を破す、よく衆生の一切の志願を満てたまふ。」顕浄土真実信文類 (本) - WikiArc
引文・浄土真宗聖典註釈版P214)
といい、その後、名号には破闇満願のはたらきがあるのに、称名憶念しても破満しないのはなぜかと問い、二知(実相身・為物身を知ること)・三信(淳心・一心・相続心)の如実修行相応でなければならないと答える。
これをうけて親鸞は、その名号が衆生の上にあらわれ出た他力称名念仏にも破闇満願のはたらきがあることを示し、「行巻」に「名を称するに、よく衆生の一切の無明を破し、よく衆生の一切の志願を満てたまふ。称名はすなはちこれ最勝真妙の正業なり。正業はすなはちこれ念仏なり。念仏はすなはちこれ南無阿弥陀仏なり。」(
顕浄土真実行文類 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P146)
と述べている。

ここでは、称名念仏にそのものには私を救う働きがあることを書かれています。曇鸞大師は「如実修行相応でなければならない」と仰いますが、自分自身を励ましてそのような「二知・三信」になるのはなかなか難しいことです。そこでそれは「他力信心」であると教えられ、他力称名念仏にも称名破満の働きがあると教えられました。

では、信前の称名念仏の意義は?

このように書きますと、「結局他力称名念仏の話であって信前の念仏のことではないではないか」と思われるのではないかと思います。
念仏を申しながら、「この南無阿弥陀仏は信前だ」とか「これを称えても助からない」と値踏みをしているのは他ならぬ私です。しかし、その判断が必ずしも正しいとは限りません。南無阿弥陀仏で私を救うとされたのは阿弥陀仏ですから、阿弥陀仏の仰せの方が正しいです。

私が信前であろうとも、口に称えられている「南無阿弥陀仏」そのものが大変な功徳利益があります。それによって救われないのはなぜかと言えば、「この南無阿弥陀仏では救われない」と私が「南無阿弥陀仏」と「救い」を別物としているからです。

必要性について

念仏が必要なのは、称えられている「南無阿弥陀仏」を称えない事には聞く事もできないからです。私が称えられるように聞く事ができるように南無阿弥陀仏となって下さったのですから、称えなければ聞く事もできません。その称えたとしても助からない、聞いたとしても分からないというのは、称える行為と称えられている南無阿弥陀仏を混同しているからであり、聞いたところの南無阿弥陀仏と私の救いを別々のものと考えてしまうからです。


南無阿弥陀仏にあれこれ値踏みをつけずに、ただ念仏して阿弥陀仏にただ今救われてください。

この記事に対する質問

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