安心問答−浄土真宗の信心について−

浄土真宗の信心についての問答

「本願を聞いて疑いないですが、感動も喜びもないので浄土真宗を周りに伝えようとは思えません。煩悩の塊である人間に浄土往生が定まったということが喜べるのでしょうか。」(Peing-質問箱-)

Peing-質問箱-

本願を聞いて疑いないですが、感動も喜びもないので浄土真宗を周りに伝えようとは思えません。 | Peing -質問箱-
質問箱には以下のように書きました。

感動するとか喜びについては、人によっていろいろと変わります。
浄土往生が定まったことを喜ぶのは阿弥陀仏の方です。その阿弥陀仏の喜びが私にどのように現れているかによって、大きく喜ぶ人もあります、あまり喜んでいないように見える人もあります。
本願を聞いて疑いないなら、聴聞を重ねていくと本願について知らされる事もいろいろと変わってくるので、今の状態が変わらないということでもありません。

これに加えて書きます。

感動や喜びは人によって異なる

この世のことでいいますと、花見というものについて、10代、20代のころの私は何がよいのかさっぱりわかりませんでした。
しかし、年を重ねてくると、桜や紅葉を見るといろいろと思う心が出てきます。

NHKのドキュメント72時間で以前放送をした、以下の番組を見ても涙が出るくらいに人間の感性というのは変わるものだなと感じます。
www.nhk.jp
NHKオンデマンド | ドキュメント72時間 「能登半島 桜咲く無人駅で」

桜自体は昔も今も変わりませんが、見ている私の心が変わってきた結果、以前と違うように感じます。同じように、本願を聞いて疑い無いといっても、感動や喜びというのがどれくらい感じるかはその人の感性の問題です。

同じ南無阿弥陀仏を聞いて疑い無いのであるならば、全員全く同じような感動や喜びが起きるというものでもありません。その人その人の個性に応じて、口から出てくる領解や喜び方は異なります。

「よろこぶべきことを、よろこばぬにて」だから喜ばないのか?

歎異抄第9条にも、

よくよく案じみれば、天にをどり地にをどるほどによろこぶべきことを、よろこばぬにて、いよいよ往生は一定とおもひたまふなり。(歎異抄 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P836)

という箇所があります。

天に踊り地に踊るほどによろこぶべきことを喜ばない自分は、そういう者を目当てに本願を建てて下さったのだから往生は一定なのだと言われています。

では、全く何も思わないのかと言えば、少し後に

他力の悲願はかくのごとし、われらがためなりけりとしられて、いよいよたのもしくおぼゆるなり。(同P837)

とあります。阿弥陀仏の本願は、いよいよたのもしく思うと書かれています。

その点を「たのもしい」と表現する人もあれば、「お差し支えなし」という人もあります。言い方はいろいろありますが、私を助けるという本願にあれこれいう必要がないことを表現しています。

煩悩があるから喜ぶべきことを喜べないとも言えますが、また煩悩があるからこそ一人一人表現が異なって現れてくるといえます。

最初の桜のことで言えば、1本の桜の木の花びら一枚で感動する人もあれば、100本の桜でやっと感動する人もあります。本願を聞いて疑い無い上で、大きく感動する人もあれば、そうでない人もありますがそれは個人差です。どちらが良いとか悪いとか、正しいとか間違いという話ではありません。

あくまで個人差

ただ、本願を聞いて疑い無い上で聴聞をしていくと「一体に何をどう聞いて喜んでいるか」ということは段々分かってきます。その上で、それを同じように喜べるかどうかは個人差です。

感動の度合いに応じて人に勧めようという気持ちも強くなったりします。しかし、感動が強いからと言って人に強く勧められるかどうかもまた、個人差があるので一様にはなりません。

煩悩の塊である人間に浄土往生がさだまったということが喜べるのでしょうか(質問箱より)

浄土往生させるという本願を聞いて疑いない上で、それをどれくらい喜ぶかは個人差です。

「個人の感想」だけど

「あくまで個人の感想です」と言ってしまえばそれまでですが、喜んでいる人が何を喜んでいるかは「私を助ける」という阿弥陀仏の本願です。その同じ法を仰いでいることが大事です。「個人の感想」というと、ありもしないものを喜んでいるように思う人もいるかもしれませんがそうではありません。

私を助ける法を聞いて疑い無いから上での話ですから、南無阿弥陀仏にまかせた上でのことです。
その上で喜ぶ人も多くおられるので、聴聞を重ねていかれればその人なりの味わいというのは出てきます。今喜べるかどうかは、大した問題ではありません。

追記 コメントに対する返信記事

この記事にコメントを頂きました。
返信は、以下の記事に書きました。
anjinmondou.hatenablog.jp