安心問答−浄土真宗の信心について−

浄土真宗の信心についての問答

「法体づのりの異安心とは、どのようなことで、何が問題なのかよくわかりません。」(頂いた質問)

メールで質問を頂きました。

法体づのりの異安心とは、どのようなことで、何が問題なのかよくわかりません。
無帰命安心で、阿弥陀様にたのめていない状態が問題なんだと言われますが、どういうことなのかわかりません。(頂いた質問)

法体づのりについては、浄土真宗辞典には以下のように書かれています。

むきみょうあんじん 無帰命安心
法体づのり・頼まず秘事などともいう。阿弥陀仏が衆生の救いをすでに完成しているのであるから、衆生は阿弥陀仏への帰命がなくても往生できるとする理解。信心を不要とするものであり、 真宗では異安心とされる。(浄土真宗辞典

異安心というのは、安心の定義が異なることをいいます。
信心ではないものを「これが信心だ」と勘違いをすることが問題です。そこで、あまりに異なる場合は「それは異安心だ」として、それを通して元々の信心の定義を明らかにするものです。

そこで、「法体づのり」は「無帰命安心」「頼まず秘事」ともいわれ、「帰命の信心」ということを言わないものです。御文章でいえば「弥陀をたのむ」ということを言わない考えをいいます。理由は、「全て阿弥陀仏が救いを完成されているので、こちらの手出しは無用である」というものです。帰命が不要ということは、いいえると信心ということも不要だし、また念仏も不要という考え方です。

そのことを昔の山口善太郎さんはこのように書いています。

この機よかろが悪かろが 仏の手元が、確かな故
あなたばかりで、済ますのは 法体づのりの親玉よ(山口善太郎)

異安心というのは、火のないところに煙は立たないように、それなりの背景があって出て来るものです。この法体づのりも、そう信じている人なりの理屈があります。

法体づのりの主調

帰命ということを否定するのは、「弥陀をたのむ」ということを「それは自力のたのみである」と思うところから始まります。「自力は捨てものだから、たのむことも不要である」というものです。
「信心」といってもよく分からないし、何を言っても思っても「それは自力だ捨てよ」と言われると、「もう何もしない」「むしろ阿弥陀仏の救いはあるのだから何もする必要はそもそもない」とするものです。

法体(阿弥陀仏そのもの)への信頼の度合いが募って(高じて)、「私がすることは一切いらない。信心も念仏も要らない」とするのが法体づのりです。
以前よく言われた言い方ですと、「この身このままのお助け」というものです。

悪人は悪人のまま、善人は善人のまま救うと本願であるというのは、一面ではそういえます。ただ、それを拡張して「だから弥陀をたのむもいらない」と「この身このまま、弥陀をたのむこともないままのお助け」となると間違いです。

「弥陀をたのむ」について

「弥陀をたのむ」は、阿弥陀仏の仰せをたのむことですから、阿弥陀仏が現在私を救おうとされていることが前提です。この現在の南無阿弥陀仏が、阿弥陀仏の救いの働きそのものであると教えられるのが、南無阿弥陀仏のいわれとか仏願の生起本末といわれるものです。

信心も念仏も阿弥陀仏の本願に出てくるものですが、阿弥陀仏は私を救うために「本願を信じ念仏するものを救う」という本願を建てられました。ですから、阿弥陀仏から言えば「どうやって私を助けるか」というのが「信心・念仏」です。

ただ今助けるの南無阿弥陀仏をたのむということを、蓮如上人は御文章でたびたび書かれています。このたのむ一念が肝要であると御一代記聞書にもあります。

(188)一 聖人(親鸞)の御流はたのむ一念のところ肝要なり。ゆゑに、たのむといふことをば代々あそばしおかれ候へども、くはしくなにとたのめといふことをしらざりき。しかれば、前々住上人の御代に、御文を御作り候ひて、「雑行をすてて、後生たすけたまへと一心に弥陀をたのめ」と、あきらかにしらせら れ候ふ。しかれば、御再興の上人にてましますものなり。(蓮如上人御一代記聞書 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P1291)
(現代文)
 「親鸞聖人のみ教えにおいては、弥陀におまかせする信心がもっとも大切なのである。
だから、弥陀におまかせするということを代々の上人がたがお示しになってこられたのであるが、人々はどのようにおまかせするのかを詳しく知らなかった。
そこで、蓮如上人は本願寺の住職になられると、御文章をお書きになり、<念仏以外のさまざまな行を捨てて、仰せのままに浄土に往生させてくださいと疑いなく弥陀におまかせしなさい>と明らかにお示しくださったのである。
だから、蓮如上人は浄土真宗ご再興の上人といわれるのである」と仰せになりました。

この身このままの救いではなく、弥陀をたのむ一念が大事です。

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以前に法体づのりについて書いた記事です。
anjinmondou.hatenablog.jp